目次


開催案内

日時

2019年4月12日(金曜日)午後3時から

 

場所

理学部6号館401講義室
アクセス 建物配置図(北部構内)【4】の建物

 

プログラム

15:00〜 ティータイム

15:15~

 

「同期現象の数理」
千葉 逸人氏 (東北大学 材料科学高等研究所 教授)

 

多数集まった同一の"モノ"たちが相互作用を及ぼし合うことによってその足並みを揃えてしまう現象を同期現象といいます。古くは壁に掛けた2つの振り子時計の同期が知られていますが、今日ではホタルの集団発光、ニューロンの発火、心臓の拍動など、自然界の様々な場面で発見されています。

同期現象を説明するための代表的な数理モデルとして蔵本モデルが知られています。講演では「相互作用の大きさがある閾値を超えると同期が起こる」という有名な蔵本予想とその数学的な背景について,数学以外の分野の方にもわかりやすく紹介したいと思います。

(講演終了後、質疑応答)

16:45~

2019 年度MACS学生説明会

スタディグループ2019 の代表教員・参加教員らによる企画説明

 
  • データ同化の数理と応用:理論モデルとデータをつなぐデータサイエンス
    代表教員:坂上 貴之(数学・数理解析専攻)
  • VRで見る・3Dで触る先端科学
    代表教員:稲生 啓行(数学・数理解析専攻)
  • 本物を見て考えよう!:脊椎動物の胚観察から数理の可能性を探る
    代表教員:高瀬 悠太(生物科学専攻)
  • 理学における代数的手法
    代表教員:石塚 裕大(数学・数理解析専攻)
  • 自然科学における統計サンプリングとモデリング:数理から実践まで
    代表教員:林 重彦(化学専攻)
  • 自然科学の対象としての経済への数理的アプローチ
    代表教員:太田 洋輝(物理学・宇宙物理学専攻)
  • 脳科学に関わる数理
    代表教員:加藤 毅(数学・数理解析専攻)
  • 動的な秩序の発展を追う
    代表教員:松本 剛(物理学・宇宙物理学専攻)
  • 疾患における集団的細胞挙動の数理モデルの開拓
    代表教員: Karel Svadlenka (数学・数理解析専攻)
  • コンピュータでとことん遊ぶ
    代表教員:藤 定義(物理学・宇宙物理学専攻)
  • 理学におけるデータ科学実践:機械学習で自然科学を読み解けるか
    代表教員:中野 直人(理学研究科 連携講師)
  • 新時代を切り開く量子計算:量子コンピュータを動かそう
    代表教員:榊原 航也(数学・数理解析専攻)
  • 理学研究科の研究者を訪ねる会 ― うまくいってないこと、うまくいかなかったことを教えてください -
    代表教員:佐々 真一(物理学・宇宙物理学専攻)

18:00~

懇親会 *学生無料 / 教職員1,000円程度

備考

◎京都大学の学生・教職員はどなたでもご参加いただけます。申し込み不要。
◎問い合わせ先:macs@sci.kyoto-u.ac.jp
 

 


開催報告

千葉 逸人氏

第8回 MACS コロキウムでは、2019年度 MACS 学生説明会に先立つ形で、千葉逸人氏(東北大学 材料科学高等研究所(AIMR)数学ユニット 教授)に「同期現象の数理」と題してご講演いただきました。

 

ご講演は、まず同期現象について、その発見の歴史をホイヘンスについての話から、光の波動説、土星の環の発見、振り子時計の開発と順に説明していただくところから始まりました。

特に、振り子時計の開発の過程で、壁にかけてある2つの振り子時計の振り子が全く逆向きに揃っていること(逆走同期)が発見されたことにも触れられていました。

そこから、振り子時計以外に、実際に観察される様々な同期現象について、実際の動画(蛍の集団発光、メトロノームの同期、ペットボトル振動子、ロンドンのミレニアムブリッジ)を見せていただき、同期現象を数理的な立場から理解することの重要性を認識することができました。

 

これらの背景に基づき、「同期現象を数学を用いて解析したい」という研究の話に徐々に移っていきました。

最初のステップは、適切な数理モデルを導出することとなりますが、同期現象の数理モデルには、蔵本モデルとして知られている非常に有名なものがあり、それを数学的に理解できれば、そこから幅広い応用が生まれることになります。

数学者の立場から考えると、「この問題を解いたら(解こうとしたら)数学がこう進化する」という問題が良い問題であり、蔵本モデルは数学の立場からしても非常に良い問題であることが述べられました。

蔵本モデルには、「非同期状態から同期状態への相転移に関する予想」として知られる蔵本予想がありますが、これはある種の仮定の上での導出手順が知られているだけで、数学的な証明は千葉先生のご研究が出るまで与えられていませんでした。

講演の最後は、非常に簡単にではありますが、千葉先生の創られた新たな数学理論(一般化スペクトル理論)を説明され、蔵本予想を「証明」された経緯を述べられました。

 

ご講演は、専門外の参加者への配慮も非常になされており、会場からは多くの質問もあり、活発な議論がなされ、大変な盛会のうちに終わることとなりました。
(文責:榊原航也)